エイワの消滅時効、支払督促、差押えに関する裁判例。神奈川県厚木市・横浜市の弁護士

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エイワの差押ケース紹介

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裁判例

 

エイワ時効債権で差押が取り消された裁判例

エイワが消滅時効期間が経過した債権で差押え、争った事例があります。

簡易裁判所でもおかしな判決が出ていますので、時効期間経過後に裁判所からの支払督促が来ている人は要注意。

宮崎地方裁判所令和2年10月21日判決の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.8

動画での解説はこちら。

 

事案の概要

平成19年10月25日エイワと借主と間で消費貸借契約が締結されました。

平成19年12月5日が借主による最終の支払いでした。

平成20年1月26日に、契約上の期限の利益を喪失。


平成31年2月9日に、仮執行宣言付支払督促が確定。


令和元年6月27日に、債権差押命令。


令和元年7月16日、請求異議訴訟の訴状で、借主が本件債権についての消滅時効援用の意思表示をしたという流れです。

期限の利益を喪失して10年以上が経過した後に、支払督促申立をしたという事例です。

たまにある流れです。

 

簡易裁判所の判断が間違えている

一審の簡易裁判所では、請求棄却の判決。

請求異議訴訟での請求棄却なので、時効を認めなかったという判断です。

簡易裁判所は、消滅時効は、時効期間が経過するのみでは、その効力は確定的には発生せず、その援用により確定的に効力が生じるものであるところ、本件では、債権が時効援用により確定的に消滅する前に仮執行宣言付支払督促が確定することにより、当該支払督促に表示されている権利の消滅時効の期間が10年になる(改正前民法174条の2第1項)ため、借主が時効を援用した時点では時効が完成しておらず、援用をしても債権が消滅しないとして、請求を棄却しました。

思いっきり判断を間違えているような印象を受けます。驚きです。

 

エイワ時効裁判の争点は2つ

このエイワ時効裁判の争点は、

・仮執行宣言付支払督促の確定で時効が中断したか

・時効の援用が信義則に反するか、

でした。

借主は、時効完成後に支払督促が申し立てられても、時効は中断しないと主張しました。

これに対し、エイワは、時効援用の意思表示の前に仮執行宣言付支払督促が確定したことにより、時効が中断したと主張。また、借主は、エイワから、合計12回も督促状を受け取っている上、支払督促の送達も受けているにもかかわらず何らの意思表示もしなかったことから、少なくとも重大な過失により時効援用を怠ってきたといえ、このような借主が時効の援用をすることは信義則に反する、とも主張しました。

信義則の主張は、かなり無理があると感じます。時効債権の督促状を受け取ったからといって、何らかの意思表示をしなければならない義務はありません。これだと、全国で多くの人が消滅時効の主張をできなくなります。

支払督促の段階で異議を出していたら、こんな主張はしなかったのではないか、請求異議訴訟まで起こされてしまったので、一応、このような主張もしてみた、という程度ではないかとすら感じます。

 

地方裁判所の判断は時効を認める

地方裁判所は、原判決を取り消し、エイワから借主に対する東京簡易裁判所平成30年(ロ)第●号事件の仮執行の宣言を付した支払督促に基づく強制執行を許さないという判決でした。

強制執行を否定している、請求異議を認めている、時効を認めた内容です。

 

支払督促と消滅時効の中断

本件仮執行宣言付支払督促の確定により、本件貸金債権の消滅時効は中断したかについて、否定の結論となりました。


本件貸金債権は、遅くとも最終弁済期から5年後の平成26年1月が経過した時点では、改正前の商法522条の消滅時効が
完成していることは明らかであるところ、平成29年法律第44号による改正前の民法にいう時効の中断とは、中断の事由が生じることにより、その時までに時効が進行してきたという事実が法的効力を失い、その事由が終了した時から新たに時効が進行するというものであり、時効が完成した後に上記改正前の民法147条各号の事由が生じても、時効が中断することはないから、本件貸金債権の消滅時効が完成した後の本件仮執行宣言付支払督促の確定により、その消滅時効が中断することはないとしました。

条文どおりの結論となっています。

 

消滅時効の援用は信義則に反しない

本件貸金債権の消滅時効の援用が信義則に反するかについても、違反しないとして、時効を認めています。


借主がエイワから何度も本件貸金契約に基づく債務の支払を求められ、本件貸金債権に係る支払督促の送達も受けながら、本件訴訟を提起するまでは本件貸金債権の消滅時効を援用しなかったことは確かであるが、そうであったとしても、そのような消極的対応は、時効による債務消滅の主張と相容れないものとまではいえず、それゆえ、本件貸金債権の消滅時効の援用は、信義則に反するとはいえないとしています。

当たり前の結論で、安心しました。

 

簡易裁判所の判断は間違い

原判決は、本件仮執行宣言付支払督促の確定前に本件貸金債権の消滅時効の援用がなされ、本件貸金債権が確定的に消滅したとは認められない以上、本件仮執行宣言付支払督促の確定により、本件貸金債権につき、新たに10年間の時効期間が進行を開始し、この新たな時効期間の完成前になされた消滅時効の援用により、本件貸金債権が消滅することはないとしています。

しかし、本件仮執行宣言付支払督促は、これが確定した後でも既判力がない以上、この確定前に完成した本件貸金債権の消滅時効を援用することにより、本件貸金債権が確定的に消滅することとなるから、原判決の判断は失当であるとしています。

支払督促に既判力はない、という民事訴訟法の原則を確認しています。

なお、支払督促ではなく、民事裁判の場合には、既判力の問題があります。

民事裁判の判決が確定した後では、時効の援用の主張ができなくなります。既判力があるから。
しかし、支払督促には既判力がないのです。

そのため、時効問題で、裁判所から手紙が届いていたという場合、それが支払督促なのか民事裁判だったのかで結論が大きく変わってきます。

 

時効完成後に中断はしない

2020年の民法改正で用語は変わっていますが、しばらくは改正前民法の時効の問題も続きます。

時効の完成後に時効が中断するということはあり得ません。

時効期間が進行しているから、それを止めるのが中断です。

時効期間経過したら、そこから中断はできないはず。

時効期間経過後に支払などがあった場合には、中断ではなく、信義則の問題として援用できないという判例はあります。あえて信義則で処理しているのは、中断がないからです。

簡易裁判所の判断は、理論的にはおかしい話ですが、エイワは同様の裁判例を証拠で提出していたとのこと。

理論的におかしい裁判例が出回ってしまっているようです。

この判例を見て、簡易裁判所、なに間違えてるの?と感じましたが、同様の判断がされているケースがあるとすると、心配です。

しっかり主張するようにしましょう。

 

とはいえ、このようなケースでは、裁判所からの支払督促が届いた時点では、消滅時効援用の意思表示をしておくべきだったといえるでしょう。そうすれば、差押などされず、ここまで争われることもなかったといえます。

 

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