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ボーナス払い併用のリスクは?

借金の返済でボーナスをあてにした計画を立ててしまうことも少なくありません。

しかし、ボーナスありきの家計はリスクが大きいです。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.8

ボーナス不支給会社が多発

2020年冬のボーナスが、リーマンショック以来の減少と報道されていました。

航空大手のANA、JR東日本など移動に関する業界では、巨額の赤字決算となるところも多いです。

旅行業界では、冬のボーナスは100%カットという大手もあります。

30年以上ぶりの不支給という会社も。

ディズニーリゾートの運営会社であるオリエンタルランドも正社員と嘱託社員のボーナスの7割カットを発表しています。

なかには、店舗閉鎖、人員カット、基本給の引き下げを検討している会社も出てきています。

 

コロナ感染リスクが高いといわれる飲食業界、観光客に支えられていた百貨店業界も厳しい数字が出ています。

100均やディスカウントストアは従前の業績を維持できているところが多い一方、インバウンドの割合が大きいドンキホーテなどは業績が悪化。

 

2020年11月16日発表のみずほ総合研究所のレポートでは、民間企業の一人当たりボーナス支給額は約36万円。

前年比で-7.5%だそうです。

調査の対象企業は従業員数が5人以上の会社。

この下落率は、リーマンショック以来の大幅マイナスと言われます。

周囲の話を聞くと、実態はもっと低いような印象を受けます。

 

大阪市内の中小企業のアンケート結果では、冬のボーナスを支給するとの回答企業が54%だったとの報道もされています。

こちらのほうが周囲の話に近い数字です。

多くの中小企業は、倒産危機にあり、ボーナスどころではないのではないでしょうか。

 

公務員についても、前年比マイナス3.8%と言われています。

 

ボーナスの法的性質

ここで、そんなにボーナスを減らすことが許されるのかという疑問が出てくるかもしれません。

給料は簡単には減額できませんが、ボーナスについては、多くの場合、不支給ができる制度設計がされています。

雇用契約や就業規則で支給条件が明確に定められ、それによってボーナスが支払われるという場合には、ボーナスは労働の対価、給料と同じく賃金の性格となります。この場合には、不支給は許されない性質になります。たとえば、年俸制でボーナス時期にも支給を割り振っているだけ、という場合には、給料を同じ性質を持つことになるでしょう。


しかし、一般には、ボーナスは支給義務を当然に負うものではなく、ボーナスの額は、業績や勤務成績に基づく人事考課、査定によって、支給率、支給日について労使間の合意や使用者によって決定されるものでしょう。

これを支給するかどうか、その金額等も使用者の裁量に委ねられていることが多いです。このような場合、ボーナスは、恩恵的給付の性質となり、賃金の性質ではないということになりそうです。

 

ボーナスと支給日在籍要件

多くの場合、ボーナスについては、支給日在籍要件が設定されています。

ボーナスの支給対象期間に勤務していても、支給日である夏や年末に会社に在籍していないと支給されないという制度です。11月に退職したら、12月支給のボーナスを受領できないという制度です。

このような支給日在職要件の有効性については、ボーナスを給料と同じような性質と考えるか、性質を異にすると考えるかによって変わってきます。

裁判例は、自分で退職日を決められる労働者や、非違行為がある被解雇者について、支給日在職要件を有効とし、ボーナスの不支給も許されるとされています。

また、定年後の嘱託社員という立場の場合で、雇用継続期間の満了で雇用が終了した場合にも、支給日在職要件が有効だとされています。

 

ただ、例年の支給日から2カ月以上の期間が遅れてボーナス支給となった場合、この支給時期の変更で、在職者のみを支給対象とすべき合理的な理由は認められないとして、支給日在職要件を排除し、退職者のボーナス請求権を認めた裁判例もあります。

 

ボーナス頼みの債務整理は危険

このようにボーナスは保証されたものではなく、これをあてにした返済計画は極めて危険です。

住宅ローンのボーナス払い、自動車ローンのボーナス払い併用や、カードのボーナス払いは最低限にとどめておきたいところです。

これらに頼っている人は、今回のボーナス不支給、減額で支払が厳しくなってしまう人も多いのではないでしょうか。

 

債務整理の方法である任意整理や個人再生では、数年間の返済計画を立てます。

ここでも、ボーナス払いを希望する人はいます。

ジン法律事務所弁護士法人では、上記のような事情からあまり勧めてはいませんが、ボーナス払いを併用して月額を下げないと整理できないとして、強く希望する場合には、そのような交渉や再生計画案を作ることもあります。

そのような方が、今回の事態で不支給をならないよう願っています。

 

任意整理や個人再生をしても、勤務先が倒産すれば払えなくなってしまう人が多いでしょう。

しかし、このようなリスクよりも、ボーナス不支給という事態は、より発生確率が高いものです。

そのようなリスクも想定したうえで返済計画を立てておくほうが無難です。

 

 

 

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