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Q.消滅時効の承認とは?

借金の消滅時効が認められるかどうかの際に、債務を「承認」したかどうかが問題になることが多いです。

承認していると、消滅時効が使えないことが多く、承認になるのかどうか争われるものです。

今回は、この債務承認について、消滅時効との関係を含めて解説します。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.7.27

 

消滅時効とは?

消滅時効とは、一定の期間、債権者が債務者に対して自己の権利を行使しない場合、その権利が消滅するという法的な制度です。

これは、債務者が一定期間にわたって債権者からの請求を受けないことで、債務が存在しないと認識し、その状態が続くことにより、債権者がその債権を行使する権利を失うというものです。消滅時効の期間は、債権の性質や法律により異なりますが、貸金業者の借金については、5年とされています。

 

消滅時効と債務承認

この消滅時効の期間ですが、リセットする制度があります。法改正前は中断、改正後は、更新や完成猶予と呼ばれたりします。リセット事由があると、5年の期間がリセットされ、そこから5年などの時効期間が再び始まるというものです。債権者としては、時効期間はリセットしてもらいたいので、これらの動きに出ます。

リセットされる事項の中で、債務承認と呼ばれる行為があります。

債務承認とは、債務者が自己の債務を認め、その存在を明確にする行為を指します。

債務承認は、債務者が債務の存在を口頭または書面で明示的に認めること、または債務の存在を暗に認める行為(例えば、返済の一部を行うなど)によって行われます。

消滅時効が進行している間に債務者が債務を承認すると、消滅時効は中断(更新)され、新たな時効期間が始まります。

これは、債務者が債務の存在を認めたことで、債権者が、消滅時効を援用されることはないだろうと期待するためです。

消滅時効制度を利用したいと考える債務者であれば、消滅時効の進行を理解し、自己の行動が債務承認と解釈されないよう注意する必要があります。

 

他の消滅時効中断事由

法律で消滅時効をリセットできる事由として挙げられているものには「請求」、「差押え、仮差押えまたは仮処分」、「承認」の三つがありました。前二つは権利者が行使する権利行為で、最後のものは義務者が行う義務承認行為です。

請求は、裁判上のものです。

これらの事実が中断事由とされた理由は、それぞれが時効の根拠となる事実状況を打破する事項だからです。

そのため、民法が列挙する事項以外でも、同じ実質を持つ事項は、中断事由として解釈するのが適切とされています。

 

消滅時効完成後の債務承認とその結果

消滅時効期間が過ぎた後に債務者が債務承認した場合、どうなるか、その結果が問題とされていました。

中断・更新は、時効期間の途中でリセットする制度です。これに対し、時効期間が過ぎているならリセットとは違うはずです。

消滅時効期間が過ぎた債務は、消滅時効の援用をすれば法的には消滅するものです。

しかし、債務者がその債務の存在を認めたのであれば、債権者は再びその債務の履行を求めることができるというのが最高裁の考え方です。

債務者が債務の存在を認めたことで、債権者がその債権を行使できると期待するからです。

この場合、消滅時効の援用は、信義則上、認められないとされています。

かつての判例では、時効の利益を放棄するためには、少なくとも時効期間が経過していることを知っていなければならないとされていました。しかし、最近の判例では、時効が成立した後に債務を承認した場合でも、その時効の成立を知らなかったとしても、その後はその成立した消滅時効の援用をすることは許されないとされています。

消滅時効イメージ

 

債務承認の具体例

債務の存在を認める行為、すなわち債務承認は、具体的には以下のような行為を指します。

1. 口頭または書面で債務の存在を明示的に認める行為:これは、債務者が「私はこの債務を認めます」または「私はこの金額を返済します」などと明確に述べる場合を指します。

支払義務を認めているものです。

2. 債務の存在を暗に認める行為:これは、債務者が返済の一部を行う、または返済計画を提案するなど、債務の存在を間接的に認める行為を指します。返済をするのは、債務があることが前提とされているため、承認になるとされています。

 

債務承認の書面とは

債務承認の書面とは、債務者が債務の存在を認める内容が記載された文書のことを指します。

これは、返済計画の提案書、借金の返済に関する契約書、または債務の存在を認める旨を記載した手紙など、形式は問われません。

重要なのは、その文書が債務者によって作成または署名され、債務の存在を認める内容が明確に記載されていることです。

ただし、債務承認の法的な効果やその解釈は、具体的な事情や法律により異なる場合があります。したがって、具体的な状況については専門的な法律助言を求めることをお勧めします。

 

承認は相手方への明示

消滅時効における「承認」は、時効の利益を享受する当事者が、権利を失う者に対して、その権利が存在することを認識していることを示す行為を指します。

このような表示があれば、権利の存在が明確になり、権利者がこれを信じて権利行使を控えても、権利行使を怠っているとはならないため、これを中断事由としています。

ただし、承認は相手方に対して明示されることが必要です。

例えば、単に自分の帳簿に利息を記入しただけでは、債権の承認にはなりません。日記など相手に見せない文書でも同じです。また、債務者が二番目の抵当権を設定しただけでは、一番目の抵当債権の承認にはならないとされています。

承認が効力を発揮するためには、承認者がその権利を持っていると仮定した場合に、承認者がそれを処分する権限または能力を持っている必要はありません。これは、承認が既に得られた権利を放棄し、消滅した債務を負担する行為ではないからです。したがって、未成年者や成年後見人などの行為能力または権限を持たない者が行った承認は、取り消すことが可能とされます。

 

 

債務承認に関する裁判例

この債務承認は、かなり解釈の余地がある言葉です。そのため、「承認」になるのかどうか争われる裁判例も多いです。

今回は、貸金自体を争われ、その中での「承認」になるかどうかが問題になり、裁判所が判断した事例を紹介します。消滅時効の主張もされていますが、そもそもそれ以前の貸金の証拠として「承認」にならないと判断し、請求を棄却している事例です。

東京地方裁判所令和4年6月21日判決です。

 

友人間の貸し借りで消滅時効

本件は、原告が、被告に対し、弁済期の定めなく数回にわたり金員を貸し付けたとして、貸金元本647万円及びこれに対する催告後相当期間が経過した後の遅延損害金を請求した事件でした。

原告と被告は、平成16年頃から友人関係にあった者でした。

原告は、平成22年10月22日、被告が麻雀店を開業するための資金として、被告名義の預金口座に330万円を振り込んでいます。

原告は、令和元年5月、被告に対し、「令和になりました」という件名を付したメールを送信したところ、被告は、同月10日、原告に対し、「おはようございます。娘の学費やら今、立て込んでいます。借金が増えて、今どうにもならないので、また連絡します。」とのメールを返信しました。

 

その後、原告は、330万円の返還を求める旨の内容証明郵便を出しました。

また、原告は、648万円の返還を求める旨の内容証明郵便を出しました。

被告は、その後、330万円については5年の経過による消滅時効を、その余については10年の経過による消滅時効を援用する旨の内容証明郵便を出しました。

原告と被告の間において、金銭消費貸借契約書や借用証書等の書面は作成されていませんでした。

 

友人から貸付自体を争われる

争点として、原告が被告に対して合計648万円を貸し付けたかどうかが問題となりました。

振込以外の金銭交付については手渡しという主張がされていました。

しかし、裁判所は、原告名義の預金口座から出金された金員が現実に被告に交付された事実を裏付ける的確な証拠はなく、内容証明郵便に記載された貸付金額が整合しないこと、原告自身、被告から領収証の交付を受けたことはなく、被告に交付した金額をメモに残しておくこともなかった旨を供述していることに照らしても、原告の供述は直ちに採用することができないとしました。

さらに、330万円の貸付についても疑問を持たれました。

330万円の返還時期や返還方法についての取決めや協議はされておらず、金銭消費貸借契約書や借用証書等の書面も作成されていない点を指摘。

原告と被告が平成16年頃から友人関係にあり、ギャンブルや飲食等を共にする親しい関係にあったことを踏まえても、原告が330万円という必ずしも少額とはいえない金員を被告に貸し付けるに当たり、返還時期や返還方法についての取決めや協議をせず、金銭消費貸借契約書等の書面も作成していないのは不合理としました。

 

メールは債務承認にならないと判断

原告は、被告が原告に対して貸付金の一部を返済していること、被告が原告に対して返済の猶予を求める趣旨のメールを送信していること、被告が贈与税の申告をしていないことなどからしても、原告が被告に貸付けを行っていたことは明らかである旨を主張。

しかしながら、被告の供述によっても、被告が原告に対して現金を交付した具体的な日時や金額は必ずしも明らかでないと指摘。

また、本件メール「娘の学費やら今、立て込んでいます。借金が増えて、今どうにもならないので、また連絡します。」という記載については、被告が、原告に対し、経済的な窮状を訴えたものにとどまり、本件メール1に「令和になりました」という件名が付されていたことをもってしても、被告が原告から交付を受けた前記330万円が貸付金であることを前提に、その返済の猶予を求めたものと認めるのは困難としました。

このメールのみでは、債務承認にならないという判断がされています。

 

貸主からすれば、令和になったので返済してほしいという趣旨で、今は借金で大変なので待ってほしいと債務を認めているかのように感じてもおかしくありません。しかし、このような漠然としたメールだけでは、時効中断どころか、貸金の証拠にすらならないという判断をしているものです。

友人関係であっても、借用書などを作成しておかないと、このような結論になってしまうこともありますので、貸した場合には注意するようにしましょう。

消滅時効を援用したい場合には、自身の発言が債務承認になってしまうものか慎重検討すると良いでしょう。

 

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