面談せずに債務整理依頼の弁護士、辞任後の着手金請求について解説

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よくある質問

 

Q.弁護士に会っていない、辞任、着手金返還請求できる?

借金問題で、弁護士に辞任されたという相談は多いです。

前弁護士に面談せずに依頼している場合、支払った着手金を返せと請求すると戻って来ることもあるという報告が消費者法ニュース140号に載っていました。

今回は、債務整理の面談と辞任、着手金返還について解説します。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.9.27

 

面談なしの債務整理

弁護士に債務整理関係の依頼をする際には、面談が義務付けられています。

日弁連が決めているルールです。

しかし、多重債務の相談を受けていたりすると、過去に弁護士に依頼していた、依頼時に面談していない、弁護士には一度も会っていないという話を聞くこともありました。

その都度、面談ルールが変わっていたか?と思って確認するのですが、今も変わらず面談が義務付けられています。

たまに、消費者問題のMLでも議論がありましたが、消費者法ニュースでも「会わずの弁護士」という問題が取り上げられていました。

流行しなさそうなネーミングではありますが、色々と問題にされてきているようです。

 

「会わずの弁護士」問題の実態

「国が認めた借金救済制度」や「無料減額診断」といった文言を使用した広告が、インターネット上で横行しています。

これらの広告は、あたかも簡単に借金が減額または免除されるかのような印象を与えます。しかし、実際にはそのような制度は存在せず、通常の債務整理手続きを行うだけとのこと。

国が認めた借金救済制度としては、法律がある自己破産や個人再生、消滅時効の援用、またはせいぜい自然災害ガイドラインの利用あたりでしょうか。

少なくとも、1社1社と交渉する任意整理は含まれないでしょう。ところが、このような広告をしているところに限って、任意整理しかやっていないこともあるとか。

 

面談しない債務整理弁護士

「会わずの弁護士」の多くは、そのネーミングのとおり、依頼者と直接面談することなく、SNSや電話のやりとりだけで任意整理を受任します。

日弁連では、債務整理事件について、弁護士との直接面談を義務づけています。

直接面談のほうが債務者の救済につながるという考えのようです。ジン法律事務所弁護士法人にも、電話で依頼したいという問い合わせは多いのですが、日弁連が決めたルールには逆らえませんので、面談が必要と案内しています。以前は、面談のために出張をすることもありました。

面談を省略することでの問題点は、依頼者の生活状況や支払能力が十分に考慮されないと言われます。面談のほうが情報が得られるという前提の考え方です。

また、その他にも「会わずの弁護士」での問題として、

・自己破産が適切な場合でも、安易に任意整理に誘導される
・法外な弁護士費用が請求される

という特徴があることが指摘されています。

 

高額な弁護士費用

日弁連では債務整理の規制として面談の義務づけのほか、一定の事件では、報酬の上限を決めています。

とはいえ、会わずの弁護士の多くは、非弁業者などが入り込み、うまく規制されていない報酬設定にしていることも。

規制されていない名目での費用請求などが見られます。

そのうえで、高額な弁護士費用を分割払いで支払えなくなった依頼者を、「会わずの弁護士」は躊躇なく見捨てて辞任します。

受任通知が送られれば事実上、督促は止まりますが、辞任通知を送られると、督促は再開します。

その結果、依頼者は高額な弁護士費用を支払っただけで、債務問題は何も解決していない状態に戻ってしまいます。

 

 

面談義務づけの根拠

日本弁護士連合会の「債務整理事件処理の規律を定める規程」第3条1項は、弁護士が債務整理事件を処理するにあたり、当該債務者との面談を義務付けています。

「会わずの弁護士」の行為は、この会規に明らかに違反しています。

加えて、広告規制に違反する可能性も指摘されています。

「弁護士等の業務広告に関する規程」では、事実に合致していない広告、誤導または誤認のおそれのある広告、誇大または過度な期待を抱かせる広告などが禁止されています。「国が認めた借金救済制度」などの表現は、これらの規定に抵触する可能性が高いとのことです。

 

着手金の返金請求

弁護士の報酬設定で、よくあるのが着手金と報酬に分かれた契約です。

着手金は、通常は、事件に着手するための費用であり、辞任や解任されても返金されないことが多いです。

しかし、相手が「会わずの弁護士」の場合、辞任された後に依頼を受けた別の弁護士が着手金返還請求をすることで返金されることも多いとの報告がされています。

理由は、面談義務違反です。

返金請求の手順として、「会わずの弁護士」に対して、面談義務違反を指摘する書面を送付し、着手金の返金請求をし、返金がない場合、懲戒請求や訴訟提起も検討する旨を伝えることで、返金確率が上がるとの報告がされています。

返金されれば、新たな自己破産申立ての着手金に充てることもできるでしょう。

この根拠は、面談していない落ち度を認めており、懲戒請求されるのは厄介だという考えによるものだとのことです。

本来、着手金と面談は関係ないはずなのですが、事実上、問題を避けようという動きのようです。

 

以前には、面談をしていない弁護士に辞任されたという依頼者もいたのですが、返金請求まではしていなかったので、今後は事案があれば検討してみようと考えています。

みんなが請求するようになったら、懲戒されたほうがいいわ、と開き直る、または会わずの弁護士が非弁業者から切り捨てられるような気もします。そうしたら、みんなが面談義務を守るようになるのでしょうか。

 

 


弁護士に辞任されたという相談も多いです。

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